「平川市」にいったい何があるというんですか
「青森県平川市」まで温泉旅行に行ったと人に話すと、「青森県平川市ってどこにあるの?」という話になる。だいたい、そうなる。ならないことがない。
「弘南鉄道弘南線の沿線の町だよ」と説明すると、一部の鉄道好きな人には分かるかもしれないが、残念なことに「弘南鉄道ってどこにあるの?」という話になる。だいたい、そうなる。「こうなんてつどう」の漢字の説明をする必要が出てくると、むしろ余計にややこしくなる。
なので、「弘前市のあたりだよ」という説明でお互いの着地点を見出すことになるわけだが、相手が弘前市の位置をきちんと把握してくれているかどうかは、分からない。そして、「ふーん、そうなんだ」という空気となって、このやり取りは終わる。だいたい、そうなる。相手もそれ以上には追及をしてこない。
かく言う私も、平川市がどこにあるのかは知らなかったのだが、ふとした偶然で平川市観光協会の作っている「ひらかわ湯めぐり」という小冊子を手に取り、弘南鉄道弘南線の沿線が日帰り温泉の宝庫であると知った。
すると、急激に私の中で平川市の存在がクローズアップされ、私の脳内のトレンドワードの上位を占めるようになり、否が応でも平川市のことを意識せざるを得なくなって、Googleマップで平川市の位置や日帰り温泉の場所を調べまくり、何なら弘南鉄道の時刻表まで調べに調べ、そうして初夏のある日、「弘南鉄道温泉ひとり旅」と銘打って、満を持して2泊3日の旅に出たのだった。

青森から弘前を旅するには、スマートフォンに入れて利用するJRの「津軽フリーパス」というものがお得で、青森や弘前を起点に2日以上の旅行をするなら、交通費の見込みを調べつつ、ぜひ購入するべきお得なきっぷ。
あるいは、弘南線沿線の温泉を1日かけてめぐるだけであれば、弘南鉄道の「大黒様きっぷ」がとてもお得だ。
日帰り温泉「福家」でランチついでの入浴
10:50発 弘前
弘南鉄道弘南線・黒石行
11:10着 柏農高校前
弘前駅を起点に、弘南鉄道弘南線に乗って、まずは柏農高校前駅へ。
駅のまわりは田んぼに囲まれていて、とてものどかな場所だ。田園の色づきの変化とともに、季節ごとに素晴らしい景色が広がることだろう。鉄道写真を撮る人であれば、列車と風景を美しく撮ってくれるに違いない。
しかし、私が訪れた時は、薄晴れのような、薄曇りのような、「映え」の要素がない中途半端な空模様だったので、風景の撮影もそこそこにして、温泉へと向かった。
まず、やって来たのは、駅から歩いて5分ちょっとのところにある「津軽おのえ温泉 日帰り宿 福家」。
食事処もあるし、日帰りプランも充実しているので、休憩室の使えるプランを利用すれば、1日だらだらと過ごすことも可能だ。とてもきれいな施設なので、安心して利用できる。
お湯は強アルカリ性のヌルっとした肌ざわり。いわゆる「すべすべ」なお湯だ。
温泉に入り、昼食を取って、だいたい1時間半。1時間に1本しかない電車に合わせつつも、時間には余裕を持っていたので、慌ただしくなりすぎることなく、次の目的地、黒石駅へ向かった。
13:10発 柏農高校前
弘南鉄道弘南線・黒石行
13:26着 黒石
青荷温泉ランプの宿でデジタルデトックス
弘南線沿線の日帰り温泉をめぐる!と言いながら、初日は1軒しか行けなかったわけだが、この日の宿泊地である青荷温泉に向かうバスの時刻に合わせるために、時間を逆算しての行動だったので、まあ、仕方がない。
黒石駅から弘南バスで「虹の湖公園」まで行き、迎えに来ていた宿の無料送迎車で青荷温泉ランプの宿へと向かう。
送迎車に乗って山の奥へと分け入っている間にも、スマホのネットの電波はどんどんと弱まり、宿に到着する頃には完全にネット環境からは切断された。話には聞いていたが、もう、5Gとか4Gとか、速いとか遅いとか、そんなレベルではなかった。
「ランプの宿」というだけあって、もちろん電灯なんてものはない。電気製品はどこにもないし、部屋には電源コンセントすら存在しない。
モバイルバッテリーを持っていたし、スマホにダウンロードしてあった映画を観るという選択肢もあったが、翌日に使う1日分の充電の残りが心配であることと、せっかくデジタルデトックスができる環境に来たのだからと、翌日までスマートフォンの電源ごとオフにした。
宿に着くと、まずは温泉で汗を流し、日が暮れるまで読書をする。津軽三味線の演奏を聞きながら夕食をゆっくり食べて、就寝前にまた温泉に浸かって眠りに入る。何もすることがないので、21時に布団に入るという、いつもの自分ならあり得ない時間での就寝だった。窓の外の池では蛙が鳴き、その声が心地良い子守歌になっていた。
翌朝、夜明け頃に自然に目が覚めて、朝風呂に入る。そして、朝食まではひたすら読書。ふう…。
温泉は、内湯の他に露天風呂、滝見の湯、健六の湯の4つの湯が楽しめる。
夕食も朝食も大広間で食べる。夕食はランプの下で、朝食は山間から朝日が昇りきる前の時間帯だったので、いずれも薄暗い中での食事だ。シンプルな味付けの食事だが、必要十分だ。食べるペースも、自然と、1品1品きちんと味わうようにゆっくりとなる。
夕食時には、ちょうど津軽三味線の演奏会の企画があり、三味線の音色を聞きながらの食事もなかなか良いものだった。そう、みんな演奏に聞き入っているので、食事をしながら無駄なおしゃべりをしているような人もおらず、とても良い雰囲気だった。
翌朝、黒石駅行きのバスの時刻に合わせて、送迎車で「虹の湖公園」まで送ってくれる。
わずか1日のデジタルデトックスではあったが、身も心も頭も時間もリフレッシュするとは、こういうことをいうのだろう。良い滞在だった。
























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