もう鉄道でのんびり旅をする時代じゃないのか
「青春18きっぷ」の改悪に続いて、JR東日本の「週末パス」が2025年6月27日をもって廃止される。年間を通して、南東北から関東甲信越を広くカバーしてくれるこの切符の存在は、鉄道旅派にとってはとても魅力的な切符だった。特急料金を払えば新幹線や特急列車に乗車できるというのも、旅の計画が立てやすくてありがたかった。
その「週末パス」がなくなる。ますます鉄道旅の選択肢は失われる。
「青春18きっぷ」が改悪される以前は、シーズンごとに東京から日帰りで行ける町までの鉄道旅をしていたものだが、それもすっかり無くなった。宇都宮、水戸、高崎、前橋、静岡、甲府…今となっては、往復で4000円とか5000円を使ってわざわざ日帰りするかといったら、まあ、よほどのことがなければ行かないだろう。「18きっぷ」があったからこその日帰り旅だった。
そして「週末パス」は、日帰り旅よりももう少し遠い場所に1泊で行くには便利な切符だった。「週末パス」だからこそ、ふらっと足を伸ばそうと思うことができた場所があったわけだが、これまたよほどのことがなければ、もう行くこともないだろう。
「週末パス」の廃止は、気軽に旅に出かけるという「鉄道旅の面白み」がますます失われていくようで、寂しさと残念な気持ちでいっぱいだ。
そこで「週末パス」消滅間際のラストスパートで使いまくってやろうという強い気持ちで、旅の計画をいくつか立てた。もちろん、セコい気持ちがないといったら噓になる。
旅を通してのメインプランは「駅前温泉」とした。今回はその最初の旅。福島の磐梯熱海まで行って、会津若松で1泊。それから新潟の新津に立ち寄って帰ってくるというプラン。
磐梯熱海駅 ハシゴで駅前温泉日帰り湯
4月某日。東京駅から新幹線自由席で郡山まで、そこから磐越西線に乗り継いで磐梯熱海へ。郡山でスムーズに乗り継ぎができる時間帯であれば、2時間弱で着く。
磐梯熱海といえば温泉。磐梯熱海での滞在は3時間を確保したので、余裕で駅前温泉を2つはハシゴできてしまう。温泉と温泉の間に昼食を挟んでも余裕がある。次の目的地である会津若松に向かう列車の時間に合わせるにも、ちょうどいい具合だ。

1件目は駅前ホテルの「湯kori」の日帰り湯。通常、入浴料金700円のところ、オープン6周年記念だとかで半額の350円で入ることができた。お湯は、入ってすぐに強めのアルカリ性のお湯と分かる泉質で、肌がヌルっとスベスベになる。カフェも併設しているので、お茶をしたり食事をすることもできる。

ちょっと早めのランチを食べた後、続けざまにやって来たのは、鄙びた雰囲気の「霊泉元湯」。源泉温度は約30℃とぬるめ…というか、プールに入っているような冷たさ。加温された浴槽もあるので、ぬる湯とあつ湯の2つを交互で入浴すると、からだがポカポカとしてくる。入浴料は時間帯によって変わるシステム。
会津若松の駅前旅館で1泊、近所に駅前温泉もあり
磐梯熱海でいきなりハシゴ温泉をした後は、磐越西線で会津若松へ。駅前の旅館を予約していたが、チェックインまで時間があったので、せっかく桜も見頃だし…と、会津若松城(鶴ヶ城)まで周遊バスで市内観光。
桜はまさに見頃で、天気も良く、花見客が多すぎて、天守閣への入場客の列も伸びまくっている。天守閣に登ろうかと思っていたが、混雑も嫌なので、ぶらぶらと桜だけ眺めて、ちょうど良い頃合いにバスで駅前へと戻る。
そう、目的はあくまでも「駅前温泉」なのだから。
会津若松での宿は、駅から歩いて数分の「ふじみ旅館」。素泊まり5000円と良心的なお値段。超シンプルな設備とアメニティだが、部屋も清潔だし、なかなか居心地が良かった。
宿のすぐ近くには「富士の湯」という天然温泉の日帰り入浴施設がある。駅前に宿を取ったのも、この駅前温泉施設が目的だったわけで、この日、3軒目の駅前温泉。
しかし、夕食は失敗だった。施設内の食事処で食べたのだが、選んだもの(中華丼をチョイス)が悪かったのか、がっかりな夕食となってしまった。後になって宿泊者限定の企画「極上のはしご酒」という企画をやっていたと知り、ますます残念な気持ちが募ってしまった。
強烈なモール臭の新津温泉へ
新潟の新津へ向かう磐越西線の始発に乗るべく、翌朝は早起き。6時半には宿の方にご挨拶をして、6時46分発の列車で車上の人となる。

この日の目的地は、終点の新津駅から歩いて行ける「新津温泉」だ。歩いて15分くらいなので、駅前温泉というわけでもないが、珍温泉好きのマニアックな温泉愛好家にはよく知られた日帰り温泉で、とにかく一度は訪れておきたいと思っていた場所。
駅を出て、商店街だったと思しきシャッター街を抜けて、新津温泉を目指す。毎度のことながら、地方都市にやって来ると、こうしたシャッター街に地方都市…ひいては都市部に集中化が進む日本という国の悲哀を感じてしまう。
新津温泉までは、Googleマップを見ても住宅街の中にあって迷いそうだったので、新津川沿いからアクセスを試みる。そして、川沿いの緑道から上がって道を入っていき、空地のような開けた場所に出たと思ったら、そこが新津温泉なのだった。話に聞いていたとおり、あたりはなんとなく石油のような匂いが漂う。
外観はただの民家のようであり、「炭酸食塩泉 新津温泉」の看板が掲げられていなければ、スルーしてしまいそうだ。見た目のボロさに期待とワクワクが止まらない。
受け付けに誰もいなかったので、上がり込んで「ごめんください」と声をかけると、部屋の奥からおばさんが現れた。400円の入浴料を払う。
玄関から廊下の雰囲気は、昭和から時が止まっているのではないかと思われ、さらに壁には全国指名手配犯のポスターが貼ってある。これも地方都市あるあるだ。期待とワクワクがさらに募る。
そして、いざ温泉へ。先客もおらず、独占状態だ。石鹸やシャンプーといったものは無いが、一応、洗い場はあるので、体を流して湯舟につかる。
お湯を手にすくい取って鼻元で嗅いでみると、一瞬、鼻にツーンと強烈な石油臭。これまでも、いくつかのモール臭と呼ばれる温泉には入ってきたが、ここまでツーンとくる匂いはなかった。お湯を舐めてみると「食塩泉」とあったように、とてもしょっぱい。しかし、その強烈で個性的な匂いとは裏腹に、お湯の温度も適温だし、けっこう入りやすいお湯だった。蛇口からの冷水を浴びて、また湯舟につかり…ということを3回ほど繰り返したら、体の内側からしっかり温まった。
石油臭いのも、それもそのはず。もともとは石油掘削のために掘っていたら出てきた温泉なのだとか(かつて新潟には油田があり、新津温泉に近い場所に「石油の里公園」なんていう施設もある)。
新津温泉は昭和29年の開業。今ではネットの記事やSNSでマニアに知られる存在となったわけだが、この日、先客がおらず、ゆっくり温泉に浸かれたのはラッキーだったのかもしれない。
風呂を上がってもなお、自分の体から石油の匂いがしているのは気のせいではなく、手のひらを嗅いでみると、たしかにほんのりと石油臭がするのだった。石油の残り香なんてどうなの?と思ったが、これがなかなクセになる感じで、駅まで戻る道すがら、何度も手のひらを嗅ぐ仕草をしてしまう自分なのだった。
そうして今回の駅前温泉旅も終わり。新津駅へ戻り、信越本線から弥彦線に乗り継いで燕三条駅へ移動し、上越新幹線の自由席で東京に戻ったのだった。
今回かかった交通費
・JR東日本「週末パス」: 8,880円
・東京から郡山まで 新幹線自由席: 3,740円
・燕三条から大宮まで 新幹線自由席: 3,740円




















